カテゴリ:本( 1 )

発売されてすぐに手にしてそれから、ずっと私は手元にこの本を置いています。
田口ランディさんの「サンカーラ この世の断片をたぐり寄せて」。
その内的世界のすさまじいまでの葛藤に引き寄せられるていくのだけれど、
真摯で厳しく言語化しようとするランディさんのこの本は、
それゆえになんと優しいのだろうと私は救われるように思うのでした。
なぜそこまでも自分をさらけだすのだろう、
どうしてここまで…と思うのだけれど、本当は誰もが問いかけていくべきものなのだと思う。
それゆえに心打たれる。
痛いけれど、痛いからこそ、そこからもっともっとその底にあるものへたどり着こうともがいていると、
ふとそういう時に訪れる精神の静謐、私にも本当にまれにではあるけれども、
言葉にはできない沈黙(とランディさんは書いている)に至ったことがある。
この本の持つまなざしというようなもの、作家田口ランディが苦しみの中で膝まづいて祈っている姿というものに、私は自分を振り返って申し訳なく思ってしまう。
これはランディさんの極限に近いまでに自分を見つめて言語化しようとする作家の
命の書だと思います。
田口ランディさんにしか書き得ない美しい言葉と構成というのか、思考の後というのか、
私はこういう言う方は適切ではないかもしれないけれども、とても好きだなあと思うのです。

田口ランディさんの言葉というのはいつも自分の心に向かってくる。
「そうだ、それについて人は真剣に考え、言語化すること」、ということを提示してくる。
死んだ者もいつか死にいく自分も同じ地平に立っているものであることを。
夜中に一人目が覚めてしまった時などにも開いて読むと対話してくるのだ。
この問いかけは誰もがもっと真摯にしなければならないものなのだと思う。

三月十一日以降にやはりいろいろなものが変わったし浮上してきた。
自分が感じられずにいることを恥ずかしく思う。
たくさんのことを感じさせてくれる。

表紙の写真もいいなあ。

サンカーラ: この世の断片をたぐり寄せて

田口 ランディ / 新潮社


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by koyomitosima | 2012-11-24 09:59 | | Comments(0)

食べることと猫のことをあいも変わらず…


by koyomitosima